国際がん研究機関
世界保健機関
ヒトに対する発がんハザードの同定に関する IARC モノグラフ
前 文
リヨン、フランス
2019 年 1 月改訂
The Work entitled Preamble to the IARC Monographs was amended in January 2019, by the
International Agency for Research on Cancer, which retains copyright in the original work.
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IARC モノグラフ 前文 と題する本文書は国際がん研究機関によって 2019 年 1 月に改訂され、そ
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ンター(JEIC)に与えられ、翻訳に対しては JEIC のみが責任を負います。
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IARC モノグラフ 前文
A. 一般的原則及び手順 1
1. 背景 1
2. 目的及び範囲 2
3. レビュー対象の作用因子の選定 2
4. ワーキンググループ及びその他の会議参加者 3
5. 作業手順 5
6. 科学的レビュー及び評価プロセスの概観 6
7. ワーキンググループの責任 8
B. 科学的レビュー及び評価 9
1. ばく露の特徴付け 9
(a) 作用因子の同定 10
(b) 検出及び分析 10
(c) 生産及び使用 10
(d) ばく露 11
(e) 規制及びガイドライン 11
(f) 重要な疫学研究におけるばく露評価の批判的レビュー 12
2. ヒトにおけるがんについての研究 12
(a) 検討される研究のタイプ 13
(b) ヒトにおけるがんについての適格な研究の特定 14
(c) 研究の質及び情報性の評価 14
(d) メタ分析及びプール分析 16
(e) 疫学的証拠全体の評価における検討事項 16
3. 実験動物におけるがんについての研究 18
(a) 検討される研究のタイプ 18
(b) 研究の評価 19
(c) アウトカム及び統計的分析 19
4. メカニズムの証拠 20
(a) 吸収、分布、代謝、及び排泄 21
(b) 発がん因子の重要な特徴に関係する証拠 21
(c) その他の関連する証拠 22
(d) 研究の質及び評価に対する重要性 23
IARC モノグラフ 前文
5. 報告されたデータの要約 24
(a) ばく露の特徴付け 24
(b) ヒトにおけるがん 24
(c) 実験動物におけるがん 24
(d) メカニズムの証拠 24
6. 評価及び論拠 25
(a) ヒトにおける発がん性 25
(b) 実験動物における発がん性 26
(c) メカニズムの証拠 27
(d) 全体的評価 28
(e) 論拠 30
参考文献 32
IARC モノグラフ 前文1IARC モノグラフ前文は、プログラムの目的及び範囲、一般的原則及び手順、ならびに科学的1レビュー及び評価を記述しています。
IARC モノグラフは、
科学的厳密さ、
公平な評価、
透明性、2及び一貫性の原則を具体化しています。
モノグラフまたはモノグラフの評価の要旨を読む際は、3この前文を参考にすることが望まれます。別文書の「著者への手引き」は、モノグラフの巻の4作成及び出版のための実務的な手順を記述しています。5A. 一般的原則及び手順61. 背景7国際がん研究機関(IARC) はその 1965 年の設立直後に、化学物質の発がん性についての助8言を頻繁に求められるようになりました。その中には、ヒトに対する確立された、及び疑わし9い発がん因子のリストを求めるものもありました。1970 年、環境発がんについての IARC 諮問10委員会は、
「発がん性化学物質の便覧を専門家が作成すること。
生物学的活性及び公衆衛生に対11する実際的な重要性の評価を参照し、文書化することが望ましい」と推奨しました。 翌年、12IARC 理事会は、
IARC は
「ヒトに対する化学物質の発がんリスクの評価についてのモノグラフ」13を作成すべきであるという決議を採択し、
これがこのシリーズの最初のタイトルになりました。14その後の数年間に、このプログラムの範囲は拡大し、複雑な混合物、職業的ばく露、物理的15作用因子、生物、医薬品、及びその他のばく露についてモノグラフが作成されました。1988 年16には、プログラムの目的に沿って「化学物質の」がタイトルから除かれ、2019 年には、
「発がん17リスクの評価」が「発がんハザードの同定」になりました。18ヒトのがんの原因を同定することは、がん予防の第一歩です。がんハザードの同定には、広19範で深い意味合いがある可能性があります。各国及び国際的な機関及び組織は、職場、環境、20及びその他のあらゆる場所での発がん因子へのばく露を低減するための行動を支援する際、が21んの原因についての情報を用いることができ、
また、
実際に用いています。
がんの予防は今日、22IARC 設立当時と同様に必要とされています。というのも、がんの世界的な負担は大きく、特に23低所得及び中所得の国々においては、人口増加、高齢化、及び何らかのばく露の増加傾向の結24果として増大し続けているためです(https://publications.iarc.fr/Non-Series-Publications/World-25Cancer-Reports)。26
この数十年間にわたって進化してきた IARC のモノグラフ作成プロセスには、専門科学者か27らなる国際的、学際的なワーキンググループの関与、異なる種類の証拠(ばく露の特性、ヒト28におけるがん、実験動物におけるがん、及び発がんのメカニズム)の透明性のある集約、なら29びに IARC が策定し、精緻化したクライテリアに従う全体的な評価と分類への反映が含まれま30す。モノグラフプログラム開始以来、発がんについての理解は大いに深まりました。科学的進31歩が評価手法に組み入れられています。特に、1991 年以来、メカニズムに関する強い証拠が全32体的な評価においてますます大きな役割を担うようになっています。33この前文は主として、モノグラフ評価全体を通した透明性と一貫性を推進するために、モノ34グラフの作成において使用される一般的な原則及び手順の表明です。
これに加えて、
IARC は、35よ り 詳 細 な 実 務 的 手 順 を 定 め た 「 著 者 へ の 手 引 き 」 を 提 供 し て い ま す36(https://monographs.iarc.fr/instructions-for-authors/)。IARC は、
がんハザード同定の方法における37進歩及び専門家からの助言を含む蓄積された経験を反映するため、
「著者への手引き」
を定期的38 IARC モノグラフ 前文2に更新しています。12. 目的及び範囲2このプログラムの目的は、
国際的、
学際的な専門家のワーキンググループの関与を得て、
様々3な作用因子の発がん性に関する証拠の科学的レビュー及び評価を作成することです。4モノグラフは、三つの証拠の流れ:ヒトにおけるがん(パート B、セクション 2 参照)
、実験5動物におけるがん(パート B、セクション 3 参照)
、及びメカニズムの証拠(パート B、セクシ6ョン 4 参照)に基づいて、ある作用因子がヒトにおいてがんを生じ得るという、入手可能な証7拠の強さを評価します。
加えて、
各々の作用因子へのばく露の特性が評価されます
(パート B、8セクション 1 参照)
。この前文において、
「作用因子」という用語は、発がん性に関する証拠が9評価されている、
何らかの化学的、
物理的または生物学的実体、
あるいはばく露状況
(例えば、10塗装工としての職業)を指します。11がんのハザード とは、がんを生じ得る作用因子であるのに対し、がんのリスク とは、がん12のハザードへのあるレベルのばく露によってがんが発生する確率の推定値です。
モノグラフは、13ある作用因子ががんのハザードであるという証拠の強さを評価します。ハザードとリスクを区14別することは非常に重要です。モノグラフは、あるばく露シナリオにおいてリスクが低いと考15えられる場合であっても、がんのハザードを同定します。その理由は、ばく露が低いレベルで16広い範囲にわたっている可能性があり、また、多くの集団におけるばく露レベルが不明、また17は文書化されていないためです。18モノグラフプログラムはハザードの同定に焦点を当てていますが、がんのハザードの同定に19用いられる幾つかの疫学研究は、
入手可能なデータの範囲内でのばく露‐反応関係の推定にも用20いられます。しかし、入手可能なデータを超えてばく露‐反応関係を外挿すること(例えば、よ21り低いばく露への外挿、または実験動物からヒトへの外挿)は、モノグラフのワーキンググル22ープの範囲外です(IARC, 2014)
。加えて、モノグラフプログラムは、他の保健機関によって作23成された定量的なリスクの特性のレビューはしません。24がんハザードの同定は、ハザード同定の結果として直接的に、またはリスク評価の実施を通25じて、公衆衛生の防護のための何らかのアクションのトリガーとなることが望まれます。その26ようなアクションは本プログラムの範囲外ですが、モノグラフは、各国当局及び国際機関・組27織が、リスク評価に活用し、予防措置に関する決定を行い、効果的ながん対策プログラムを促28進し、複数の選択肢の中から公衆衛生に関する決定を選択するために用いられます。モノグラ29フの評価は、発がん因子へのばく露を管理する意思決定の基礎となり得る情報全体の一部に過30ぎません。がん予防のための選択肢は、状況により、また地理的地域によって様々であり、国31によって異なる優先事項を含め、多くの要素を考慮に入れます。従って、モノグラフにおいて32は、規制、法律制定、またはその他の政策アプローチに関する推奨事項は与えられません。そ33れらは個々の政府または組織の責任です。モノグラフプログラムはまた、研究の推奨事項も示34しません。但し、モノグラフは、発がん性に関する証拠の流れを集約、統合し、重大な知識の35欠如を指摘することによって、発がんの科学に大いに貢献している、という点に留意すること36が重要です。373. レビュー対象の作用因子の選定38 IARC モノグラフ 前文3IARC は 1984 年以来、約 5 年ごとに、モノグラフプログラムによるレビューの対象となる作1用因子を推奨するため、国際的、学際的な諮問グループを招集します。IARC は、発がん因子に2関する現在の研究及び公衆衛生の優先事項に関する知識が豊富な諮問グループメンバーを選出3します。諮問グループ会議に先立ち、IARC は世界中の科学者及び政府機関から作用因子の候4補を募集します。IARC は 2003 年以来、公衆からも候補を募集しています。IARC は各々の諮5問グループに対し、
作用因子の候補をレビューし、
ばく露とハザードの潜在的可能性を評価し、6これらの活動についての諮問委員会のプロセス及び推奨のための論拠を文書化する報告書を作7成することを求めます。8IARC は、モノグラフの各々の新巻のため、関連する調査研究の入手可能性及び現在の公衆9衛生上の優先事項を考慮して、直近の諮問グループによって推奨された作用因子から、レビュ10ーの対象となる作用因子を選定します。時に、IARC は、新たに現れた発がんハザードを速やか11に評価する必要性がある場合、または、以前の分類を再評価する喫緊の必要性がある場合、他12の作用因子を選定することがあります。全ての評価において、以前のレビュー後に発表された13情報に限らず、入手可能な証拠全体を検討します。14モノグラフでは、以下の作用因子をレビューすることがあります。15(a) 以前のモノグラフでレビューされていない作用因子で、
ヒトがばく露される潜在的可能16性があり、
その発がん性を評価すべき証拠がある場合。
関連する作用因子のグループ(例17
えば金属化合物)は、そのグループの一つまたはそれ以上の作用因子に発がん性を評価18すべき証拠がある場合はまとめてレビューされることがあります。19(b) 以前のモノグラフでレビューされた作用因子で、
ヒトまたは実験動物におけるがんの新20たな証拠、あるいは分類の再評価を是認するメカニズムの証拠がある場合。効率性とい21う点から、文献検索は以前の包括的検索に基づいて構築されることがあります。22(c) ヒトに対する発がん性が確立されており、
以前のモノグラフでレビューされている作用23因子で、因果関係があるかもしれない新たな腫瘍部位を示す、ヒトにおけるがんの新た24な証拠がある場合。効率性という点から、レビューはこれらの新しい腫瘍部位に焦点を25絞ることがあります。264. ワーキンググループ及びその他の会議参加者27以下の 5 つのカテゴリーの参加者が、モノグラフ会議に参加できます。28(i) ワーキンググループのメンバーは、モノグラフの当該巻において作成される全ての科学的29レビュー及び評価に責任を有します。
ワーキンググループは学際的であり、
次の分野の専門30家のサブグループから構成されます。(a) ばく露の特徴付け、(b) ヒトにおけるがん、(c) 実31験動物におけるがん、及び(d) メカニズムの証拠。IARC は、主題及び関係する手法に関す32る専門性、
ならびに利益相反がないことに基づいて、
ワーキンググループのメンバーを選出33します。科学的アプローチ及び視点の多様性、ならびに人口構成も考慮されます。ワーキン34ググループのメンバーは一般的に、レビュー対象の作用因子のばく露または発がん性に関35連する研究を発表しており、IARC は文献検索を利用してほとんどの専門家を特定します。36IARC は 2006 年以来、
「専門家募集」を通じた公募も奨励しています。主題に関する知識及37び/または方法論的評価における専門性を有する専門家への IARC の依拠は、
特別な専門性38に価値があるということ、ならびに、ワーキンググループのメンバーの圧倒的多数が、自ら39 IARC モノグラフ 前文4の研究結果の狭小な進展または既に決定された結果にではなく、科学的証拠の客観的な評1価に専心していることを文書化してきた数十年もの経験によって確認されています
(Wild &2Cogliano, 2011)
。ワーキンググループのメンバーには、IARC の公衆衛生上の任務に奉仕す3ることが期待されており、
モノグラフの完全な巻が出版されるまでは、
レビュー対象の作用4因子に関連する金銭的利益のためのコンサルティング及びその他の活動、または会議から5得た内部情報の使用を避けることが望まれます。6IARC は、ワーキンググループのメンバーの中から、会議議長及びサブグループ座長として7奉仕する人物を特定します。会議の冒頭で、ワーキンググループは、会議議長の選出を承認8することを求められ、
代替策を提案する機会も与えられます。
会議議長とサブグループ座長9はレビュープロセスの全ての段階において主導的役割を担い
(パート A、
セクション 7 を参10照)
、通常の委員会手順に従ってワーキンググループの全てのメンバーが関与する開かれた11科学的議論を促進し、この前文の順守を担保します。12(ii) 招聘スペシャリストは、重要な知識と経験を有しますが、利益相反も有するため、発がん13性の評価の作成またはそれへの影響力の行使からの除外が是認される専門家です。招聘ス14ペシャリストは、がんデータの記述または解釈に関係するモノグラフのどのセクションも15起草せず、評価にも参加しません。これらの専門家は、その比類ない知識及び経験を議論16に提供することにより、ワーキンググループを支援するのに必要な場合、限られた人数が17招聘されます。18(iii) 各国及び国際的な保健機関の代表者は、それぞれの機関が会議の議題に関心があるため、19会議に参加することがあります。彼らはモノグラフのどのセクションも起草せず、評価に20も参加しません。21(iv) 関連する科学的資格のあるオブザーバーは、限られた人数で参加を許可されることがあり22ます。異なる視点をもつ選出母体からのオブザーバーのバランスに注意が払われます。オ23ブザーバーは会議を傍聴するため招かれるのであって、会議に影響力を行使しようとすべ24きではなく、IARC モノグラフ会議におけるオブザーバーのためのガイドラインを尊重す25ることに同意します。オブザーバーはモノグラフのどのセクションも起草せず、評価にも26参加しません。27(v) IARC 事務局は、IARC から任命された、関連する専門性を有する科学者で構成されます。28IARC 事務局は、評価の全ての面を調整及び促進し、科学的レビュー及び分類の作成を通29じて前文の順守を担保します(パート A、セクション 5 及び 6 参照)
。IARC 事務局は、会30議を企画、告知し、ワーキンググループのメンバーを特定、募集し、全ての会議参加者の31利害関係の宣言を評価します。IARC 事務局は、文献を検索し、題名及び抄訳のスクリーニ32ングを実施し、会議前草稿の作成を調整して分野横断的な論点を議論するために電話会議33を開催し、 会議前及び会議中に草稿をレビューすることで、ワーキンググループの活動34(パート A、セクション 7 参照)を支援します。IARC 事務局のメンバーは会議の報告者35として奉仕し、全ての議論を促進する上で会議議長とサブグループ座長を支援し、会議議36長とサブグループ座長によって指名された場合には本文または表を起草することもありま37す。IARC 事務局の評価への参加は、前文の明確化または解釈の役割に限られます。38出版されるモノグラフの巻の前付に、全ての参加者のリストが、主な所属とともに掲載され39ます。ワーキンググループのメンバー及び招聘スペシャリストは、何らかの組織、政府、また40 IARC モノグラフ 前文5は産業界の代表者としてではなく、個人の科学者として奉仕します(Cogliano et al., 2004)。1
会議参加者の役割を表 1 に要約します。2表 1 IARC モノグラフ会議での参加者の役割
役割
参加者のカテゴリー 文 書 、 表 、 分
析の作成
議論への参加 評価への参加 座 長 を務 める
資格
ワーキンググループメンバー ✓ ✓ ✓ ✓
招聘スペシャリスト ✓a ✓
保健機関の代表者 ✓b
オブザーバー ✓b
IARC 事務局 ✓c ✓ ✓d
a ばく露の特徴付けに関するセクションについてのみ
b 会議の議長及びサブグループの座長に指名された場合のみ
c 必要な場合、または会議の議長及びサブグループの座長に要請された場合
d 前文の明確化または解釈についてのみ
5. 作業手順3個々のワーキンググループはモノグラフの各巻の作成に責任を負います。一つの巻には、一4つまたはそれ以上のモノグラフが含まれ、これが単一の作用因子または複数の関連する作用因5子をカバーすることがあります。ワーキンググループの会議の約一年前に、レビューされる作6用因子の暫定リストが、
「データ募集」及び「専門家募集」とともに、モノグラフプログラムの7ウェブサイト(https://monographs.iarc.fr)で発表されます。8会議招待状が出される前に、IARC 事務局を含む参加見込みの人はそれぞれ、会議の議題に9関連する金銭的利害、雇用及びコンサルティング(専門家証人としての奉仕に対する報酬を含10む)
、個人及び所属組織への研究助成、公的声明や立場などの非金銭的利害を報告するため、11「WHO の利害関係宣言書」の書式に記入します。IARC はこの利害関係宣言書を評価し、参加12への何らかの制限を是認する利益相反があるかどうかを決定します(表 2 参照)。13
モノグラフ会議の約二か月前に、IARC は、透明性の観点から、また、宣言されていない利益14相反に IARC の注意を喚起する機会を提供するために、全ての会議参加者の氏名と所属を、宣15言された利害関係の要旨とともに公表します。オブザーバーまたは第三者が会議の前に他の参16加者に接触すること、または、いかなるときにも他の参加者にロビー活動を行うことは受け入17れられません。会議参加者はそのような接触があれば全て IARC に報告することが求められま18す(Cogliano et al., 2005)。19
ワーキンググループは IARC において約八日間の会議を行い、科学的レビューを議論、最終20化し、要旨と評価を作成します。会議の開始時に、全ての参加者はそれぞれの利害関係宣言書21の書式を更新し、IARC がこれをレビューします。会議の議題に関係する宣言された利害関係22は、会議中に参加者に、また、発行された巻の中で開示されます(Cogliano et al., 2004)
。会議23の目的は査読とコンセンサスです。会議の前半では、サブグループのセッション(ばく露の特24徴付け、
ヒトにおけるがん、
実験動物におけるがん、
及びメカニズムの証拠をカバーする)
で、25 IARC モノグラフ 前文6会議前草稿のレビュー、合同サブグループ草稿の作成、及びサブグループの要旨の草稿作成が1行われます。会議の後半では、ワーキンググループは全体会議を行い、サブグループの草稿及2び要旨をレビューし、コンセンサス評価を作成します。その結果として、その巻全体がワーキ3ンググループの共同成果物となり、個人が著者となるセクションはありません。会議後、マス4ターコピーが IARC 事務局によって検収され、
出版に向けて編集と準備がなされます。
目標は、5ワーキンググループ会議の約九か月以内にその巻を出版することです。評価の要旨及び裏付け6となる主な証拠は、科学誌での発表のために準備されるか、または、会議後ほどなくしてモノ7グラフプログラムのウェブサイト上で公開されます。8透明性のために、IARC は、表 2 に要約するように、プロセス全体を通して公衆と協力をし9ます。10表 2 モノグラフ作成中の公衆の関与
おおよその時期 関与
5 年毎 IARC は将来のレビューのための優先順位の高い作用因子を
推奨するための諮問グループを招集する
モノグラフ会議の約 1 年前 IARC はモノグラフの新たな巻でレビュー対象とする作用因
子を選定する
IARC はウェブサイトに以下を掲載する:
レビュー対象の作用因子の暫定リスト
データ募集及び専門家募集
オブザーバー資格の要請
WHO の利害関係宣言書の書式
モノグラフ会議の約 8 か月前 専門家募集の締め切り
モノグラフ会議の約 4 か月前 オブザーバー資格の要請の締め切り
モノグラフ会議の約 2 か月前 IARC は全ての会議参加者の氏名及び利害関係宣言書の要旨、
ならびに利害関係者によるワーキンググループとの接触を控
えるよう促す声明を掲載する
モノグラフ会議の約 1 か月前 データ募集の締め切り
モノグラフ会議の約 2-4 週間後 IARC は評価の要旨及び重要な支持的証拠を発表する
モノグラフ会議の約 9 か月後 IARC 事務局は全体会議の草稿の確認済み・編集済みのマスタ
ーコピーをモノグラフの巻として発表する
6. 科学的レビュー及び評価プロセスの概観11ワーキンググループは、全ての関連する疫学研究、実験動物におけるがんバイオアッセイ、12及びメカニズムの証拠、ならびにヒトにおけるばく露についての関連情報を検討します。一般13的に、ヒトにおけるがん、実験動物におけるがん、及びメカニズムの証拠については、オープ14ンに入手可能な科学的文献において発表されている、または発表のために受理されている研究15のみがレビューされます。状況によっては、公に入手可能で、その内容が最終化されている資16料も、その研究の手法と結果の質の評価を可能にする十分な情報があれば、レビューされるこ17とがあります(後述のステップ 1 を参照)
。そのような資料には、政府機関からの公に入手可能18 IARC モノグラフ 前文7な報告書及びデータベース、ならびに博士論文が含まれることがあります。発表済み及び公に1入手可能な研究に依拠することは透明性を促進し、未熟な情報の引用を防ぎます。2ヒトにおけるがん、実験動物におけるがんに関する証拠、及びメカニズムの証拠の同定、ス3クリーニング、集約及び評価には、系統的レビューの原則が適用されます(パート B のセクシ4ョン 2〜4 に記述あり、また「著者への手引き」に詳述あり)
。各モノグラフは、それぞれ証拠5の流れに対して用いた検索語及び包含/除外クライテリアを含め、文献検索の実施についての6情報を明示または参照します。7簡潔に言えば、レビュープロセスのステップは以下のとおりです。8ステップ 1. 関連情報の包括的で透明性のある特定 :IARC 事務局は、権威ある生物医学デ9ータベース
(例えば、
PubMed、
PubChem)
に含まれる文献の最初の包括的検索、
及び
「デ10ータ募集」を通じて、関連する研究を特定します。司書及びその他の技術的専門家との11協議の上でデザインされた、これらの文献検索では、その作用因子がヒトにおいてがん12を生じるかどうか、実験系においてがんを生じるかどうか、及び/または(ヒトにおい13て、
または実験系において)
確立されたヒトの発がん因子の重要な特徴を示すかどうか、14を検索します。
ワーキンググループは、
検索戦略を精緻化するための情報と助言を IARC15に提供し、その他の検索(例えば、過去のモノグラフ、検索した論文、及びその他の権16威あるレビューの参考文献リストから)を通じて文献を特定します。17特定のタイプの作用因子(例えば、規制農薬や薬品)については、IARC は、関連する規制18当局、及びそのような当局から規制される関係者に対し、関連する未発表の研究が「デ19ータ募集」に明記された期日までに公に入手可能なようにする機会を与えています。ワ20ーキンググループによるそのような研究の検討は、
(a) 選択的報告があったかどうか(例21
えば、結果について、または実施された研究の大きなセットから)
、(b) 研究の質(例え22ば、デザイン、手法及び結果報告)
、ならびに(c)研究結果の独立した評価を可能にする23十分な情報が公に入手可能であることに依拠しています。24ステップ 2. 研究のスクリーニング、選定、及び整理 :IARC 事務局は、事前に定義された25除外クライテリアに従い、題名及び概要のレビューに基づき、取得した文献を包含のた26めにスクリーニングします。例えば、その作用因子(またはその作用因子の代謝産物)27についてのものでない、あるいは、疫学的または毒性学的エンドポイントについてのオ28リジナルデータを報告していない研究(例えばレビュー論文)は除外されることがあり29ます。ワーキンググループは、IARC によって行われた題名及び概要のスクリーニング30をレビューし、本文全体のレビューを実施します。除外についてのいずれの理由も記録31され、包含される研究は、パート B のセクション 2〜4 に記述されている検討事項に関32連する要素
(例えば、
デザイン、
動物種、
及びエンドポイント)
に従って整理されます。33ある研究の包含は、
その研究のデザインまたはその結果の分析及び解釈の妥当性が受け34入れられたということを意味するものではありません。35ステップ 3. 研究の質の評価 :ワーキンググループは、パート B のセクション 2〜4 に記述36されている検討事項(例えば、デザイン、手法、及び結果の報告)に基づき、包含され37 IARC モノグラフ 前文8た研究の質を評価します。これらの検討事項に基づき、ワーキンググループは、包含さ1れた研究の幾つかに対し、より大きな重みを与えることがあります。結果の解釈ならび2に研究の強みと限界は、研究の説明の末尾の角括弧内で明確に概説されます(パート B3参照)。4
ステップ 4. 研究の質の評価を含む、包含された研究の特徴の報告 :包含された研究の関連5する特徴及び結果は、パート B のセクション 1〜4 に詳述されているように、レビュー6され、簡潔に記述されます。データの表形式化はこの報告を容易にするでしょう。この7ステップはステップ 3 の反復となることがあります。8ステップ 5. 証拠の強さの集約及び評価 :ワーキンググループは、個々の証拠の流れ(ヒト9におけるがん、実験動物におけるがん、及びメカニズムの証拠;パート B のセクション105 参照)からの証拠の全体的な強さと限界を要約します。ワーキンググループは次に、11パート B のセクション 6a〜c に示されている透明性のある方法及び定義された説明用12語を用いることで、各々の証拠の流れからの証拠の強さを評価します。ワーキンググル13ープは次に、ヒトにおけるがんの研究、実験動物におけるがんの研究からの証拠、及び14メカニズムの証拠の強さについての結論を統合した、
発がん性についてのコンセンサス15を得た分類の論拠を作成、記述します(パート B、セクション 6d 参照)。16
7. ワーキンググループの責任17ワーキンググループは、モノグラフの一つの巻のための、関連する研究の特定及び評価、な18らびに科学的レビュー及び評価の作成に責任を負います。IARC 事務局は、ワーキンググルー19プのこれらの活動を支援します(パート A、セクション 4 参照)
。簡潔に言えば、評価の作成に20おけるワーキンググループの任務は、以下の順番のとおりです。21(i) 会議前に、ワーキンググループは、上述のように(パート A、セクション 6 参照)
、全て22の適切な研究が特定され、選択されていることを確認し、個々の研究の手法及び質を評価しま23す。ワーキンググループのメンバーは、研究のデザイン及び結果の重要な要素を抽出し、顕著24な強みと限界を強調することで、参考になる研究の正確な表形式または文章による要旨を示し25た会議前作業用草稿を作成します。彼らは IARC が開催する電話会議に参加し、作業用草稿の26作成を調整し、分野横断的な論点について討議します。全ての作業用草稿の会議前レビューは27一般的に、
研究の特定、
データ抽出、
またはその草稿のための研究レビューに参加しなかった、28二人またはそれ以上のサブグループメンバーによって実施されます。各研究の要旨は、その研29究に関係しない人物によって執筆またはレビューされます。30(ii) 会議では、サブグループ内で、ワーキンググループのメンバーは会議前草稿を批判的に31レビュー、討議、改訂し、コンセンサスを得たサブグループ草稿としてその改訂版を採用しま32す。サブグループの座長は、各々の研究の要旨の討議をその研究に関与していない人物が主導33することを担保します。次に、IARC モノグラフのクライテリア(パート B、セクション 6a〜c34参照)を用いてサブグループでレビューされた証拠の強さの分類案が、証拠の要旨についての35コンセンサスを得たサブグループ草稿から作成されます(パート B、セクション 5 参照)。36
IARC モノグラフ 前文9(iii) 全体会議の際、各サブグループは、科学的レビュー及び討議のための草稿を、研究の特1定、データ抽出、またはその草稿のための研究のレビューに参加しなかった、他のワーキング2グループのメンバーに提示します。サブグループの座長は、各々の研究の要旨の討議をその研3究に関与していない人物が主導することを担保します。レビュー、討議、及び必要に応じて改4訂の後、サブグループ草稿はワーキンググループのコンセンサスを得た成果物として採用され5ます。IARC モノグラフのクライテリア(パート B、セクション 6a〜c 参照)に沿ってサブグル6ープで作成された、
証拠の強さの要旨及び分類は、
ワーキンググループ全体によって検討され、7必要に応じて改訂され、採用されます。会議議長は、パート B のセクション 6d に示すガイダ8ンスを用いて全体的な評価を提案します。9ワーキンググループは、コンセンサスを得た評価の達成に努めます。コンセンサスはワーキ10ンググループ内での広範な合意を反映していますが、全会一致とは限りません。会議議長は、11コンセンサスが見込めない論点についての科学的意見の多様性を判断するために、ワーキング12グループで投票を行うことがあります。13全体会議の最終成果物のみが、ワーキンググループの見解及び専門家の提言を表します。モ14ノグラフの巻全体がワーキンググループの共同成果物であり、学際的な専門家グループによる15証拠全体(個々の研究、集約及び評価)の包括的で徹底的な査読を表します。最初の作業用草16稿とそれに続く改訂稿は発表されません。というのは、それらは、丸々一週間にわたるワーキ17ンググループの審議によって作成されたコンセンサスについて、不完全で誤解を招くかもしれ18ない印象を与えることになるためです。19B. 科学的レビュー及び評価20前文のこのパートでは、モノグラフの各セクションにおいて検討され、要約される証拠の種21類について論じ、続いて、評価の基礎となる科学的クライテリアを示します。更に、その巻の22冒頭の総論のセクションでは、その作用因子が評価の計画に組み込まれた理由、及び会議中に23遭遇した重要な論点を論じます。241. ばく露の特徴付け25このセクションでは、作用因子を同定し、その発生、主な用途、生産の場所と量について、26適宜記述しています。また、関連する研究で存在率、濃度、世界中でのヒトにおけるばく露に27関連する経路を要約しています。ばく露の測定及び分析の手法について記述し、ワーキンググ28ループによってレビューされた重要な疫学研究において用いられたばく露評価の手法について29述べ、評価します。30モノグラフプログラムの過程を通じて、ばく露及び用量の概念は、作用因子と生体系との相31互作用の理解が深まるにつれて大きく進化してきました。ばく露の概念は化学的、物理的、及32び生物学的作用因子を超えて、心理社会的ストレッサーを含む一般的にストレッサーであると33みなされているものにまで拡大し、包括的なものになっています(National Research Council,342012; National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine, 2017)
。全体として、この概念の35拡大は、モノグラフのばく露の特徴付けと他のセクションとの更なる統合を支持しています。36吸収、分布、代謝、及び排泄の概念は、メカニズムの証拠の最初のサブセクションで検討され37 IARC モノグラフ 前文10(パート B、セクション 4a 参照)
、一方、ばく露評価で通常用いられる、内部ばく露または代1謝産物の検証されたバイオマーカーは、このセクションで報告されます(パート B、セクショ2ン 1b 参照)。3
(a) 作用因子の同定4評価対象の作用因子は曖昧さがないように同定されます。作用因子の種類によって詳細は異5なりますが、一般的に、その作用因子の同定、発生、及び生物学的活性に関係する物理的及び6化学的特性が含まれます。実験動物または in vitro 系で試験済みの物質が、ヒトがばく露される7物質と異なる場合、これらの相違が明記されます。8化学的作用因子については、化学物質登録番号[Chemical Abstracts Service Registry Number:9CAS 番号]
、ならびに、最新の主要な名称及び一般的に使用されているその他の名称(重要な10商標名を含む)とともに、その作用因子を含む一般的な混合物または生成物の組成、潜在的に11毒性及び/または発がん性のある不純物についての入手可能な情報が示されます。ヒトのばく12露の潜在性についての理解に関連する物理的特性、及びヒトについての研究に用いられるばく13露の指標が要約されます。これらには、物理的状態、揮発性、水溶性、油溶性、環境中及び/14またはヒトの組織内での半減期が含まれることがあります。15生物的作用因子については、分類及び構造が記述されます。複製の様式、細胞周期、標的細16胞、持続性、潜伏期間、及び宿主反応(がん以外の病理を通じた罹患率及び死亡率を含む)も17提示されます。18異物、繊維及び微粒子については、組成、サイズの範囲、相対寸法、及び標的臓器における19蓄積、残存、及び排除が要約されます。放射線の形態の物理的作用因子は、周波数スペクトル20とエネルギー伝達という点から記述されます。21ばく露は、食事の成分、睡眠、及び身体的活動のパターンを含む、多様な範囲の社会的及び22環境的要因の結果として生じる、またはその影響力を受けることがあります。そうした場合、23このセクションには、ヒトに対する潜在的発がんハザードの理解、及び疫学研究におけるばく24露評価の鑑定に関連する、作用因子の説明、ヒト集団間でのばらつき、ならびに組成または特25性、が含まれます。26(b) 検出及び分析27作用因子の検出と定量化の重要な手法は、サーベイランス、規制及び疫学研究において最も28広く用いられるものに重点を置いて示されます。ヒトのばく露の重要な発生源であるとみなさ29れるサンプル物質(例えば、空気、飲料水、食物、ハウスダスト)についての測定手法、及び、30検証済みのばく露バイオマーカー(例えば、ヒトの血液、尿、または唾液中の作用因子または31その代謝産物)の測定手法が記述されます。検出及び定量化の限界に関する情報は、それが入32手可能で、ヒト及び実験動物における研究の解釈に有用である場合に提供されます。これは網33羅的な論文ではなく、入手可能なばく露データ及びこれらの測定に依拠する疫学研究の強みと34限界について、読者が理解するのを助けることを意味しています。35(c) 生産及び使用36ワーキンググループによってレビューされた重要な疫学研究、及びヒトの集団全般の両方に37 IARC モノグラフ 前文11おいて、ばく露が発生する可能性がある状況を読者が理解するのを助けるため、生産及び使用1における歴史的及び地理的なパターン及び傾向が入手可能な場合には、それらが含まれます。2その作用因子を生産、使用または廃棄する産業に関する情報が、入手可能な場合には世界の分3布を含めて記述されます。国内もしくは国際的な、高生産量の化学物質としてのリストまたは4同様の分類が含まれることがあります。職業ばく露または環境汚染の有意な潜在的可能性があ5る生産プロセスが示されます。ばく露の潜在的可能性の理解に関連する、世界的な生産量、技6術、及びその他のデータが要約されます。ばく露の有意な潜在的可能性がある、または重要な7疫学研究に特に関係する、僅かな使用または過去の使用も含まれます。急激な経済成長が、高8所得国におけるばく露よりも高いばく露につながる可能性がある、低・中所得国における生産9についてのデータを見出すことに、特段の努力が向けられることがあります。10(d) ばく露11ヒトにおけるばく露の発生源、存在率、及びレベルに関する定量的情報の簡潔な概観が示さ12れます。調査研究、政府の報告書及びウェブサイト、オンラインデータベース、ならびにその13他の引用可能な、公に入手可能な情報源からの代表データが表にまとめられます。低・中所得14国からのデータが求められ、実現可能な限り含められます。重要な地域についての情報の不足15が記載されます。ばく露の自然発生源(もしあれば)が記されます。作用因子へのばく露によ16るがんハザードの潜在的可能性の理解に関連する、
主なばく露経路
(例えば、
吸入、
経口摂取、17皮膚からの吸収)及びその他の検討事項が報告されます。18職業上の状況については、ばく露の存在率及びレベル(例えば、空気中またはヒトの組織内19の)に関する情報が、産業、職業、地域、及び可能であればその他の特性(例えば、プロセス、20タスク)ごとに報告されます。過去のばく露傾向、ばく露を制限するための防護措置、及び職21場におけるその他の発がん性作用因子への潜在的な同時ばく露についての情報が、入手可能で22あれば提供されます。23職業以外の状況については、作用因子の発生は環境モニタリングまたはサーベイランスデー24タを用いて記述されます。ばく露の存在率及びレベル(例えば、ヒトの組織内の濃度)
、ならび25に飲食物、消費者製品、消費習慣、及び個人の微小環境からのばく露及び/またはその中での26濃縮に関する情報が、地域ごと及びその他の関連する特性ごとに報告されます。より高いばく27露または感受性に関与する可能性のある、ライフステージ、疾病の状態または栄養状態におけ28るばく露を記述することに特段の重要性が置かれます。29現在のばく露が主な関心事ですが、過去のばく露傾向についての情報も、入手可能であれば30提供されます。過去のばく露は、疫学研究の解釈のために、また、作用因子が持続的である、31または長期的影響がある場合に、関連がある可能性があります。重要な期間についての情報の32不足が記されます。ヒトのばく露にあまり関連がないとみなされるばく露データは一般的に考33慮されません。34(e) 規制及びガイドライン35作用因子についての既に確立されている規制またはガイドライン(例えば、職業ばく露制限36値、食品及び水における最大許容レベル、農薬登録)が、ばく露を制限するための政府の取り37組みについての状況を提示するために簡略に記述されます。これらは、既存または過去のばく38 IARC モノグラフ 前文12露レベルの解釈のために有益であれば、表にとりまとめられることがあります。対象集団につ1いての情報、
関係する特定の作用因子、
規制の根拠
(例えば、
ヒトの健康リスク、
環境的配慮)、2
及び実施のタイミングが記載されることがあります。国内及び国際的な生産、使用及び交易の3禁止についても示されます。4このセクションは、主なまたは実例的な規制を含めることを意図しており、世界の規制プロ5セスは複雑で広範にわたるため、包括的ではないかもしれません。規制の状況についての情報6がないことを、ある所与の国または地域では作用因子へのばく露がない、またはばく露に関す7る規制がない、ということを暗に意味しているととらえるべきではありません。8(f) 重要な疫学研究におけるばく露評価の批判的レビュー9疫学研究は、
ばく露が異なる群間のアウトカムの比較によって、
がんハザードを評価します。10従って、ハザード同定のために研究知見を解釈する際、用いられたばく露評価の手法の種類及11び質が重要な検討事項です。このセクションでは、モノグラフの評価に関連するデータを提供12する、個々の疫学研究で用いられたばく露評価の手法を要約し、批判的にレビューします。13全ての可能性のある作用因子に適用されるばく露評価手法の質を評価するための標準的な一14連のクライテリアはありませんが、幾つかの概念は普遍的に関連があります。作用因子に関わ15らず、全てのばく露には二つの主な次元、即ち強度(濃度または用量として定義されることが16あります)
及び時間です。
時間については、
期間
(最初のばく露から最後のばく露までの期間)、17
パターンまたは頻度(継続的か、または間欠的か)
、及び感受性の窓が考慮されます。このセク18ションでは、重要な疫学研究がそれぞれ、これらの次元をどのように特徴付けているかを検討19します。ばく露情報の解釈には、吸収、分布、代謝、及び排泄を含む、メカニズムの証拠(例20えば、パート B のセクション 4a に記載あり)についての検討による情報が提示されることも21あります。22疫学研究におけるばく露の強度及び時間は、環境または生物学的モニタリングデータ、職場23またはその他の発生源からの記録、専門家による評価、モデル化したばく露、職業‐ばく露マ24トリクス、及びアンケートまたはインタビューを通じた被験者または代理人の報告を用いて特25徴付けることができます。調査者は、これらのデータの情報源及び手法を個別に、または組み26合わせて用いて、ばく露指標のレベルまたは値(これは定量的、半定量的、または定性的なこ27とがあります)を研究対象の集団の構成員に割り当てます。28ヒトにおける(がんの、及びメカニズムの)研究をレビューするワーキンググループのメン29バーと協力して、重要な疫学研究が特定されます。選択された各々の研究について、ばく露評30価のアプローチ、その強みと限界が、文章及び表を用いて要約されます。ワーキンググループ31のメンバーは、ばく露評価の手法についての懸念、及びレビュー対象の各々の研究についての32全体的な質に対するそれらの影響を特定します(パート B、セクション 2d 及び 4d 参照)
。その33研究で示された情報がばく露評価を適切に検討するには不十分である状況では、その旨が示さ34れます。十分な情報が入手可能な場合、誤分類(影響の過大評価、過小評価、または未知の)35を含む、ばく露測定の誤差によって生じる可能性のあるバイアスの方向性が論じられます。362. ヒトにおけるがんについての研究37このセクションは、がんを一つのアウトカムとして含む、全ての関係する疫学研究(パート38 IARC モノグラフ 前文13B、
セクション 2b 参照)
を含みます。
これらの研究には、
特定のタイプのバイオマーカー研究、1例えば、ばく露指標としてのバイオマーカーを用いた研究(パート B、セクション 2 参照)
、あ2るいは、所与のばく露と一致する組織学的または腫瘍のサブタイプ及び腫瘍における分子シグ3ネチャーを評価する研究が含まれます(Alexandrov et al., 2016)
。初期の生物学的影響のバイオ4マーカーを評価する研究はパート B のセクション 4 でレビューされます。5(a) 検討される研究のタイプ6幾つかの種類の疫学研究がヒトにおける発がん性の評価に貢献しています。これらには一般7的に、
コホート研究
(症例コホート研究及びコホート内症例対照研究といった派生研究を含む)、8
症例対照研究、生態学的研究、及び介入研究が含まれます。稀に、無作為化試験の結果が入手9可能であることがあります。例外的に、ヒトのがんについての症例報告及び症例シリーズもレ10ビューされることがあります。これらのデザインに加えて、疫学における革新が、所与のいず11れかのモノグラフの評価において、その他の多くの派生研究の検討を可能にしています。12コホート研究及び症例対照研究は一般的に、研究対象の個々のばく露とそれらの個人におけ13るがんの発生とを関連付ける能力があり、関連の主な指標として影響の推定値(相対リスクな14ど)を提供します。適切に実施されたコホート研究及び症例対照研究が、ワーキンググループ15によって評価されたヒトにおけるがんの証拠のほとんどを提供します。介入研究はさほど一般16的ではありませんが、入手可能な場合は、因果関係の推論のための強力な証拠を提供すること17ができます。18生態学的研究では、調査の単位は通常、人口集団全体(例えば、特定の地理的区域または特19定の時期における)であり、がんの頻度は研究対象の人口集団におけるばく露の集約的指標に20関連します。生態学的研究では、個々のばく露とアウトカムに関するデータは入手できず、そ21のことが、この種類の研究で交絡及びばく露の誤分類を生じやすくしています。但し、状況に22よっては、生態学的研究は、特にばく露の単位が人口集団レベルにおいて非常に正確に測定さ23れる場合、有益となることがあります(例えば、飲料水中のヒ素についてのモノグラフ;IARC,242004 参照)。25
例外的に、症例報告及び症例シリーズも、作用因子の発がん性について強力な証拠を提供す26ることがあります。実際に、職業的ながんハザードの早期発見の多くは、労働者と、共通の職27業またはばく露を共有する労働者におけるがんの高い頻度に気づいた臨床医による観察からも28たらされました。そのような観察は、より体系的な調査の出発点となることがありますが、リ29スクが十分高い例外的な状況では、症例シリーズがそれ自体で強力な証拠を提供することがあ30ります。これは特に、アリストロキア酸を含有する植物の例(IARC, 2012a)にあるように、ば31く露状況がかなり珍しい場合に是認されます。32症例報告、症例シリーズ、及び生態学的研究の解釈にまつわる不確かさのために、上述した33ような稀な場合を除き、これらの研究は一般に、相関関係を推論するための唯一の根拠とする34には不十分です。但し、コホート研究及び症例対照研究と併せて検討する場合、これらの研究35は、因果関係があるという判断を支持することがあります。36良性新生物、新生物発生前の病変、悪性前駆体、及びその他のエンドポイントについての疫37学研究も、レビュー対象の作用因子に関連する場合にレビューされます。場合によっては、こ38れらの疫学研究が、がん自体についての研究から導出された推論を強化することがあります。39 IARC モノグラフ 前文14例えば、良性脳腫瘍は、悪性脳腫瘍とリスク要因を共有することがあり、また、良性新生物(ま1たは挙動が不確かな新生物)は悪性への因果経路の一部であることがあります(例えば、骨髄2異形成症候群は急性骨髄性白血病に進行することがあります)。3
(b) ヒトにおけるがんについての適格な研究の特定4ヒトにおけるがんについて関連のある研究は、
パート A や
「著者への手引き」
の詳細な説明、5及び以下で詳述されているように、系統的レビューの原則を用いて特定されます。適格な研究6には、アウトカムとしてのがんを伴う対象の作用因子へのヒトのばく露に関する全ての研究が7含まれます。独立した研究の数が正確に表されるように、同じ研究対象集団についての複数の8出版物が特定されます。複数の出版物は、例えば、単一のコホートのその後の追跡から、ばく9露と疾病との関連の異なる側面に焦点を当てた分析から、または重複する集団を包含すること10から生じる可能性があります。通常、そのような場合には、直近の、最も包括的な、または最11も情報性の高い報告のみが詳細にレビューされます。12(c) 研究の質及び情報性の評価13疫学研究は、以下で簡潔に要約しているように、複数の異なる誤差の原因から影響を受ける14潜在的可能性があります。これらの論点に対処する個々の研究の質も以下で述べています。15研究の質は、ワーキンググループによって実施される体系的な専門家レビュープロセスの一16部として評価されます。質の評価の重要な側面の一つは、疫学研究の解釈において偶然及びバ17イアスが果たす可能性のある役割についての検討です。
偶然は、
無作為のばらつきとも呼ばれ、18誤解を招く研究結果を生じさせることがあります。研究結果におけるこのばらつきはサンプル19サイズに強く影響されます。より小規模な研究はより大規模な研究と比較して、不正確な影響20推定が生じる可能性がより高いです。ある研究での影響の点推定値のまわりの信頼区間は、単21に偶然によって容易に生じる可能性のある推定値の範囲を示すために通常用いられます。22バイアスとは、ある関連が、作用因子と疾病との間に実際に存在する関連よりも誤ってより23強く、
またはより弱く見えるようになる、
研究のデザインまたは実施における要因の影響です。24検討する必要のあるバイアスは様々ですが、通常、選択バイアス、情報バイアス(例えば、ば25く露及び疾病の測定における誤差)ならびに交絡(または交絡バイアス)に分類されます26(Rothman et al., 2008)
。疫学研究における選択バイアスは、適格な集団から参加者またはその27フォローアップを研究に含める際に、その参加者のばく露またはアウトカム(通常は疾病の発28生)に影響力を受ける場合に発生します。このような状況下では、その研究で見出された関連29の指標は、その影響力がなければ適格集団において見出されていたはずの関連を正確に反映し30ません(Hernán et al., 2004)
。情報バイアスは、ばく露またはアウトカムの測定における不正確31さから生じます。どちらも、仮説上の原因と影響との関連を、実際の関連より強く、またはよ32り弱く見せる可能性があります。
交絡は、
外的な影響と調査対象の影響との混合です
(Rothman33et al., 2008)
。原因とされる要因と、疾病の発生率の上昇または低下と関連する別の要因との間34に関連がある場合、原因と推定される要因と疾病との間に実際にはない関連があるとされる、35または実際にはある関連がないとされることにつながる可能性があります。これらのいずれか36が生じる場合、交絡が存在します。37研究の質の評価において、ワーキンググループは一貫して以下の側面を検討します。38 IARC モノグラフ 前文15• 研究の記述:研究のデザイン及びその実施を記述する上での明確性、ならびに研究とそ1の結果についてのその他の全ての重要な情報の完全性。2• 研究対象集団:研究対象集団が、作用因子とがんとの間の関連の評価のために適切であ3ったかどうか。研究が、選択バイアスを最小化するようにデザインされ、実施されたか4どうか。研究対象集団におけるがんの症例は、対象のばく露とは独立した方法で同定さ5れていなければならず、ばく露は疾病(アウトカム)の状態に関連しない方法で評価さ6れていなければなりません。これらの側面において、対象集団からの研究への採用の完7全性及び結果の追跡の完全性は必要不可欠な指標です。8• アウトカムの測定:検討対象の作用因子とがんの種類に対するがんアウトカムの測定9(例えば、死亡率 対 発生率)の適切性、アウトカムの確認手法、及びアウトカムの誤10分類が関連の指標におけるバイアスにつながっていた可能性の程度。11• ばく露測定:作用因子へのばく露を評価するために用いられた手法の妥当性、及び、誤12分類を含むばく露測定における誤差による関連の指標におけるバイアスの尤度(及び方13向性)
(パート B、セクション 1f に記述あり)。14
• 潜在的な交絡の評価:疾病のリスクに影響力を及ぼす可能性のある、及び、対象のばく15露に関連していたかもしれないその他の変数(同時ばく露を含む、パート B、セクショ16ン 1d に記述あり)
を、
著者らがどの程度まで研究のデザイン及び分析において考慮に入17れたか。そのような変数による潜在的な交絡の重要な発生源は、研究のデザインにおい18て、例えばマッチングまたは制限により、あるいは分析において統計的調整により対処19されていることが望まれます。交絡因子に関する直接的な情報が入手できないような場20合、ばく露と疾病との関連に対する交絡の潜在的影響を評価するための間接的な方法を21用いることが適切です(例えば、Axelson & Steenland, 1988; Richardson et al., 2014)。22
• その他の潜在的バイアスの原因:どの疫学研究も、その研究対象集団、デザイン、デー23タ収集、及び、その結果として、潜在的バイアスにおいて独特です。可能性のある全て24のバイアスの発生源は、それが結果に対して及ぼす可能性のある影響について検討され25ます。報告バイアス(即ち、一部の結果を選択的に報告し、それ以外の結果を報告しな26い)の可能性を探ることが望まれます。27• 統計的手法:用いられた統計的手法の妥当性、及びその手法により、ばく露とアウトカ28ムとの関連についてのバイアスのない推定、信頼区間、及び関連の指標の有意性につい29ての検定統計量を得られる能力。必要な場合のマッチングのための調整、及び、可能性30の高い媒介変数を交絡因子として処理してしまわないようにすることを含む、交絡を調31べるために用いられた手法の適切性。
累積ばく露のようなばく露の要約指標、
あるいは、32最初のばく露時の年齢または最初のばく露からの経過時間といった時間的変数に関係す33るがんリスクの詳細な分析が、入手可能であれば、レビューされ、要約されます。34効率性と簡略化のため、この前文では、可能性のある誤差の発生源のリストは「偶然、バイ35アス、及び交絡」というフレーズで呼ばれていますが、このフレーズは研究の質に関する包括36 IARC モノグラフ 前文16的な一式の懸念事項を包含している、ということを認識することが望まれます。1これらの誤差の発生源は、研究の質の指標の正式なチェックリストを構成しておらず、それ2として用いるべきではありません。これら全ての誤差の潜在的発生源をどのように集約し、こ3れらの検討事項のそれぞれに関連する誤差の潜在的可能性をどのように見積もることが望まし4いかを検討する際に、異なる論点にどの程度の重みを割り当てるかという決定には、経験ある5専門家の判断が極めて重要です。6ある研究の情報性は、作用因子とがんとの間に、関連がある場合は真の関連を、関連が存在7しない場合は、関連がないことを示す能力です。情報性の重要な決定因子には以下が含まれま8す:影響の正確な推定を得るために十分なサイズの研究対象集団があること;もし影響がある9ならば、それが観察されるための、ばく露からアウトカムの測定までの十分な経過時間;適切10なばく露のコントラスト(強度、頻度、及び/または継続時間)があること;生物学的に関連11あるばく露の定義;ならびに、ばく露及びアウトカムについての関連のある、良く定義された12時間の窓。13(d) メタ分析及びプール分析14同じ作用因子についての独立した複数の疫学研究が、解釈または整合が困難な一貫しない結15果につながることがあります。このような曖昧さに対処する手法として、複数の研究からのデ16ータの統合分析が実施されることがあります。
統合分析には二つの種類があります。
一つ目は、17個々の研究から相対リスクといった要約統計量を統合するもの(メタ分析)
、二つ目は、個々の18研究からの生データをプールして分析するもの
(プール分析)
です
(Greenland & O’Rourke, 2008)。19
統合分析の強みは、
サンプルサイズの増大により精度が増すこと、
及び、
プール分析の場合、20潜在的な交絡因子をより良く制御し、研究間の不一致を説明するかもしれない相互作用及び修21飾効果をより詳細に探索する機会が得られることです。統合分析の不利な点は、集団の特性、22被験者の募集、データ収集の手順、測定手法における差異、ならびに、研究間で異なる可能性23のある未測定の共変数の影響のため、様々な研究からのデータを比較できないかもしれないこ24とです。研究の手法及び質におけるこれらの差異は、メタ分析またはプール分析のいずれかの25結果に影響力を及ぼす可能性があります。発表済みのメタ分析がワーキンググループによって26検討される場合、適格な研究を特定するために用いられた手法、及び、個々の研究から抽出さ27れたデータの正確性を含め、その妥当性を注意深く評価する必要があります。28ワーキンググループの関連の評価に貢献する、ばく露とアウトカムの関連についての研究が29十分にある場合、ワーキンググループはモノグラフ会議の最中に臨時のメタ分析を実施するこ30とがあります。そのような未発表のオリジナルの計算の結果は、本文において角括弧で囲んで31表記されますが、これには、より新しい研究の結果、または改めての分析を組み入れた、以前32に実施された分析の更新が関わることがあります。33メタ分析及びプール分析のためのデータの供給源に関わらず、次の重要な検討事項が適用さ34れます:データの質については個々の研究に対するものと同じクライテリアが適用されなけれ35ばなりません;研究間の不一致の発生源を注意深く考慮しなければなりません;また、出版バ36イアスの可能性も探求することが望まれます。37(e) 疫学的証拠全体の評価における検討事項38 IARC モノグラフ 前文17疫学的証拠全体が作用因子の発がん性についてワーキンググループに情報を与える能力には、1証拠の量と質の両方が関連しています。因果関係についての推論を引き出すために、ヒトにお2けるがんについての研究がどれだけ必要かという質問に対し、型にはまった回答はありません3が、一つの集団における一つ以上の研究がほとんど常に必要とされます。その数は、以下に述4べる証拠に関連する検討事項に依存することになります。5がんについての個々の疫学研究の質が評価され、作用因子とがんとの間の関連についての6様々な研究の情報性が評価された後、問題の作用因子にはヒトに対して発がん性があるという7証拠の強さについて判断が下されます。その判断を下す際、ワーキンググループは、証拠全体8の幾つかの側面を考慮します
(例えば、
Hill, 1965; Rothman et al., 2008; Vandenbroucke et al., 2016)。9
強い関連(例えば、大きな相対リスク)は弱い関連よりも因果関係を強く示す可能性が高い10です。これは、交絡が誤って強い関連を生じさせることはより難しいためです。但し、影響の11推定値が小さいことは因果関係がないということを含意するものではなく、疾病またはばく露12が一般的である場合、公衆衛生に影響を及ぼす可能性があると認識されています。また、小さ13い影響の推定値を、ばく露がより高い集団からのリスク推定値と比較した場合(例えば、居住14環境でのラドンについての研究を、ウラン採鉱からのラドンについての研究と比較した際に見15られるように)、リスクのレベルがばく露のレベルに比例していれば、
因果関係の評価に有用な16情報を提供できるかもしれません。17同じデザインの幾つかの研究で、または異なる疫学的アプローチを用いる研究で、あるいは18異なるばく露状況下で、一貫して観察される関連は、単一の研究からの単独の観察よりも因果19関係を示す可能性が高いです。研究間で一貫しない結果がある場合、可能性のある理由が検討20されます(例えば、潜伏期、ばく露レベル、または評価手法による、研究の情報性における差21異)
。質と情報性が高いと判断される研究の結果には、方法論的に健全性がより低い、または情22報性がより低いと判断される研究の結果よりも大きな重みが与えられます。23関連の時間性は本質的な検討事項です:即ち、ばく露はアウトカムより前に起こらなければ24なりません。25ばく露の増加に伴ってがんリスクが上昇するという観察は、因果関係の強い兆候とみなされ26ますが、段階的反応がないことは必ずしも因果関係がないという証拠ではなく、ばく露‐反応27関係の形状がなぜ単調ではないことがあるのかという疑問には幾つかの理由があります(例え28ば、Stayner et al., 2003)
。個人または集団全体におけるばく露の中止または低減後のリスク低下29の証明も、知見の因果解釈を支持します。30ヒトにおけるがんについての研究からの証拠の因果解釈における信頼性は、それが生理学的31及び生物学的知識と一致すれば強められます。これには、標的臓器へのばく露、潜伏期及びば32く露のタイミング、及び腫瘍のサブタイプの特徴についての情報が含まれます。33ワーキンググループは、作用因子からのがんへの感受性が高い亜集団があるかどうかを検討34します。例えば、遺伝子多型と、評価対象の作用因子へのがんの感受性における個人差との間35の関連を同定する分子疫学研究は、ヒトに対する発がんハザードの同定に貢献する可能性があ36ります。仮に多型がばく露‐反応関係の修飾因子であることが見出されれば、そのような研究37は特に情報性があるかもしれません。というのは、多型の評価は感受性のある亜集団における38影響を検出する能力を高めるかもしれないためです。39ヒトにおけるがんについての研究を評価する上で、ワーキンググループが、ばく露と特定の40 IARC モノグラフ 前文18タイプのがんとの間に正の関連がないこと、
または逆関連があることのいずれかを明確に示す、1質が高く、情報性のある疫学研究を同定した場合、それらは全体として、そのがんのタイプに2対しては発がん性がないという証拠を示唆している、との判断が下されることがあります。そ3のような判断には、まず、それらの研究が先述のデザイン及び分析の基準を厳格に満たしてい4ることが要求されます。具体的には、バイアス、交絡、あるいはばく露またはアウトカムの誤5分類によって、観察された結果が説明できる可能性が検討され、これが合理的な信頼性をもっ6て排除されることが望まれます。加えて、方法論的に健全であると判断される研究は全て、(a)7観察されたいずれのばく露レベルについて、
相対的な影響推定値が一貫して 1
(または 1 未満)8であり、(b) 総合的に考えた場合、相対リスクの統合推定値が 1 または 1 未満を示し、また、9(c) 信頼区間が狭い、ということが望まれます。更に、良好にデザインされ、良好に実施された10個々の研究、または全ての研究のプールされた結果のどちらも、がんの相対リスクがばく露レ11ベルの上昇に伴い上昇するという一貫した傾向を示さないことが望まれます。幾つかの疫学研12究から得られた、発がん性がないという証拠は、研究されたがんのタイプ、報告されたばく露13レベルならびに研究されたばく露のタイミング及び経路、これらの研究において観察された最14初のばく露から疾病の発生までの間隔、ならびに研究された一般集団に対してのみ適用できる15(即ち、感受性の高い亜集団またはライフステージがあるかもしれない)ということに留意し16なければなりません。ヒトにおけるがんについての研究からの経験は、最初のばく露から臨床17的ながんの発生までの期間は 20 年以上になることがあること;従って、約 30 年より大幅に短18い潜伏期間は、発がん性がないという証拠を提供することはできない、ということを示してい19ます。更に、例えばジエチルスチルベストロールと、子宮頸部及び膣の明細胞腺癌のように、20極めて重要なばく露の窓があるかもしれません(IARC, 2012a)。21
3. 実験動物におけるがんについての研究22実験動物における発がん性について適切に研究されてきたヒトの発がん因子のほとんどは、23一つまたはそれ以上の動物種において陽性の結果を生じています。幾つかの作用因子について24は、疫学研究がヒトにおける発がん性を同定する前に、実験動物における発がん性が立証され25ていました。この観察は、実験動物においてがんを生じる全ての作用因子がヒトにおいてもが26んを生じる、
ということを確立することはできませんが、
実験動物において 発がん性の十分な27証拠がある作用因子(パート B、セクション 6b 参照)はヒトに対する発がんハザードを呈す28る、ということは生物学的に妥当なことです。従って、所与の作用因子が、実験動物において29種に特定のメカニズムを通じてがんを生じ、そのメカニズムはヒトにおいては働かないという30強い証拠のような、更なる科学的情報がない状況では(パート B、セクション 4 及び 6; Capen31et al., 1999; IARC, 2003 を参照)
、これらの作用因子はヒトに対して潜在的な発がんハザードを32与えるとみなされます。ヒトに対して潜在的な発がんハザードがあるという推論は、異なる種33間の腫瘍部位の一致をほのめかすものではありません(Baan et al., 2019)。34
(a) 検討される研究のタイプ35実験動物におけるがんに関係する研究は、パート A や「著者への手引き」の詳細な説明、及36び以下で詳述されているように、系統的レビューの原則を用いて特定されます。レビュー対象37の作用因子
(またはその作用因子の代謝産物もしくは誘導体である可能性があるもの)
(パート38 IARC モノグラフ 前文19A、セクション 7 参照)を用いた実験動物におけるがんについての全ての入手可能な長期的研1究が、研究の特徴の徹底的な評価の後に検討されます(パート B、セクション 3b 参照)
。評価2に関係しない、または不十分であると判断される研究(例えば、期間が短すぎる、動物の数が3少なすぎる、生存率が低いなど;以下を参照)は除外されることがあります。長期的な発がん4性実験の実施についてのガイドラインが出版されています(例えば、OECD, 2018)。5
通常の長期バイオアッセイに加えて、
別の研究
(例えば、
遺伝子操作マウスモデルでの研究)6も、実験動物における発がん性の評価において、研究の特徴の批判的評価後に検討されること7があります。一般的にヒトにしか感染しないウイルスのような、特定のばく露についての研究8には、そのような特別の実験動物モデルを用いることが特に重要であることがあります;モデ9ルには、ヒトのがんがそこから生じた組織を発現の標的とするウイルスの遺伝子を有する遺伝10子操作マウス、ならびに、そのウイルスに通常感染するヒトの細胞を移植されたヒト化マウス11が含まれます。12その他のタイプの研究も、支持的証拠を提供することができます。そのような研究には、発13がん作用を修飾する要因の存在下で作用因子が投与された実験(例えば、イニシエーション-14プロモーション研究)
、エンドポイントががんではなく、定義された前がん病変である研究、及15び、作用因子にばく露された非実験動物(例えば、伴侶動物)におけるがんの研究、が含まれ16ます。17(b) 研究の評価18ある特定の研究の解釈及び評価における重要性の検討事項には以下が含まれます。(i) 作用19因子が、不純物及び混入物の性質及び程度、ならびに作用因子の安定性を含め、明確に特徴付20けられていたか、また混合物の場合、サンプルの特徴付けが適切に報告されていたか;(ii) 特21に吸入実験では、用量が適切にモニターされていたか;(iii) 用量、処理の期間及び頻度、観察22期間、
及びばく露経路が適切であったか;(iv) 適切な実験動物の種と系統が評価されていたか;23(v) 各群には適切な数の動物がいたか;(vi) 動物が無作為に群に割り付けられていたか;(vii) 体24重、摂餌量及び摂水量、ならびに処理された動物の生存率が、試験対象の作用因子以外の何ら25かの要因による影響を受けていたか、
(viii) 組織病理学的レビューが適切であったか、
ならびに26(ix) データが適切に報告され、分析されていたか。27(c) アウトカム及び統計的分析28実験動物における発がん性の知見の評価には、
以下の検討事項が関係します。
(i) ばく露の経29路、
用量、
スケジュール及び時間、
動物の種、
系統
(該当する場合は遺伝的背景を含む)、性別、30年齢、ならびに追跡調査の期間といった研究の特徴、
;(ii) 新生物前駆病変及び良性腫瘍から悪31性新生物までの新生物反応のスペクトル;(iii) 新生物及び新生物前駆病変の発生、潜伏期間、32重症度及び多重度;(iv) 同様のデザインの研究間での一つまたはそれ以上の特定の標的臓器に33ついての結果の一貫性;ならびに(v) 修飾要因(例えば、食餌、感染症、ストレス)が果たすか34もしれない役割。35統計的分析での重要な要因には以下が含まれます。(i) 研究された動物の数及び組織学的に36検査された動物の数;(ii) 所与の腫瘍タイプまたは病変のある動物の数、及び(iii) 生存期間。37腫瘍発生の評価において、以下の場合、良性腫瘍が悪性腫瘍と組み合わされることがありま38 IARC モノグラフ 前文20す:(a) 特定の研究において、
ある臓器または組織で良性腫瘍が悪性腫瘍と同じ細胞とともにそ1こから発生する場合、また(b) 悪性病変へのプログレッションにおける一段階を表していると2見られる場合(Huff et al., 1989)
。前がん状態であると推定される病変の発生は、場合によって3は、観察された何らかの新生物反応の生物学的妥当性を評価する助けになることがあります。4ばく露のレベル上昇に伴い新生物の発生が増加するという証拠は、ばく露と新生物の発生と5の間に因果関係があるという推論を強化します。用量-反応関係の形状は、研究対象の特定の6作用因子及び標的臓器によって、非線形を含め、非常に様々である可能性があります。用量-7反応関係はまた、処理群間の生存率の差異によっても影響される可能性があります。8用いられた統計的手法は明確に述べられることが望まれ、この目的のために精緻化された一9般的に受け入れられている技法であることが望まれます
(Peto et al., 1980; Gart et al., 1986; Portier10& Bailer, 1989; Bieler & Williams, 1993)
。最も適切な統計的手法を選択するには、処理群間の生11存率に違いがあるかどうかの検討が必要です;例えば、腫瘍に関連しない死亡による生存率の12低下は、その後の生涯における腫瘍の発生を排除する可能性があり、生存率で調整した分析が13是認されます。生存率に関する詳細な情報が入手できない場合、腫瘍発生前の生存率に有意差14があれば、動物の有効数(最初の腫瘍発見時に生存していた動物の数)における担がん動物の15割合を比較することが有益である可能性があります。腫瘍の致死性の検討も必要です:急速に16死に至る腫瘍については、死亡の時点が腫瘍発生の時点の指標を示し、生命表法を用いて評価17できます;生存率に影響しない非致死的腫瘍または偶発腫瘍は、腫瘍有病率の変化を Mantel-18Haenszel 検定などの手法を用いて評価できます。腫瘍の致死性の決定はしばしば困難であるた19め、そのような情報を必要としない poly-k 検定のような手法も用いることができます。実験動20物に見られた腫瘍の数及びサイズについての結果が入手可能な場合(例えば、マウス皮膚での21乳頭腫、核磁気共鳴断層撮影法で観察された肝腫瘍)
、その他の、より複雑な統計的手法が必要22となることがあります(Sherman et al., 1994; Dunson et al., 2003)。23
同時対照群は一般的に、統計的分析のための最も適切な比較群です;但し、稀な腫瘍につい24ては、研究間のばらつきが少ない場合には特に、歴史的対照群のデータを検討することで分析25が改善されることがあります。歴史的対照群は、種、性別、及び系統、ならびに、対照群の動26物における腫瘍反応率に影響を及ぼすかもしれない基礎飼料及び全般的な実験環境といった他27の要因に関して、可能な限り密接に同時対照群と類似するように選択することが望まれます28(Haseman et al., 1984; Fung et al., 1996; Greim et al., 2003)
。一般的に、歴史的対照群の範囲内に29収まると主張することで、同時対照群と比較して有意に増加した腫瘍反応を考慮しないことは30適切ではありません。31メタ分析及びプール分析は、実験プロトコルが十分に類似している場合に適切であることが32あります。334. メカニズムの証拠34メカニズムのデータは発がん性の証拠を提供することがあり、また、実験動物及びヒトにお35けるがんの知見の関連性と重要性を評価する助けになることもあります(Guyton et al., 2009;36Parkkinen et al., 2018)
(パート B、セクション 6 参照)
。メカニズム研究は、その量、多様性及37びがんハザード評価への関連性が増し、注目されるようになりました。一方、モノグラフで評38価される他の証拠の流れに関する研究(即ち、ヒトにおけるがんの研究、及びげっ歯類におけ39 IARC モノグラフ 前文21る生涯のがんのバイオアッセイ)は、ヒトが現在それにばく露されている作用因子の一部につ1いてのみ入手可能である可能性があります(Guyton et al., 2009, 2018)
。メカニズム研究及びデ2ータは、パート A や「著者への手引き」の詳細な説明、及び以下でも詳述しているように、系3統的レビューの原則を用いることで、評価に対する質及び重要性について特定され、スクリー4ニングされ、評価されます。5ワーキンググループの集約は、実験デザイン内及び研究デザイン間の結果の一貫性または差6異の特徴付けを強調して、包含された研究の各群を要約した、入手可能な証拠の程度を反映し7ます。ヒトに関連する研究からの、情報性のあるメカニズムの証拠の方が、その他の実験的検8査系からのものよりも強調され、欠落が特定されます。データを表にまとめると、このレビュ9ーが容易になることがあります。証拠の集約において扱われる具体的なトピックスを以下で説10明します。11(a) 吸収、分布、代謝、及び排泄12哺乳類種における吸収、分布、代謝、及び排泄についての研究は、要約の形で扱われます;13ばく露の特徴付けはパート B のセクション 1 で扱われています。ワーキンググループは、哺乳14類種における作用因子の代謝的運命を、特定された代謝産物とその化学反応性に留意して記述15します。代謝スキームが、関連する代謝経路及び産生物、ならびに、支持的証拠がヒトにおけ16る研究から、
及び/または実験動物における研究からのものかどうか、
を示すことがあります。17直接的な証拠が乏しい場合、腫瘍部位での吸収、分布、及び/または代謝を間接的に確認する18他の悪影響についての証拠が簡潔に要約されます。19(b) 発がん因子の重要な特徴に関係する証拠20IARC モノグラフ第 100 巻までにグループ 1 に分類されたヒトに対する発がん因子について21のレビューにより、がんのハザード同定のためのメカニズムの証拠の評価の改善に関係する幾22つかの論点が明らかになりました(Smith et al., 2016)
。第一に、ヒトに対する発がん因子はしば23しば、それによって作用因子ががんを生じる複数のメカニズムに関係する、一つまたはそれ以24上の特性を共有することが留意されました。第二に、ヒトに対する異なる発がん因子は、これ25らの重要な特徴の異なるスペクトルを呈し、明確に異なるメカニズムを通して働くことがあり26ます。第三に、第 100 巻以前に評価された多くの発がん因子については、エピジェネティック27な改変といった、発がんにおける重要性が認識されている幾つかのメカニズムについてのデー28タがほとんど入手できませんでした(Herceg et al., 2013)
。第四に、関係するメカニズムの証拠29を系統的に検索するための広く受け入れられている方法がなく、IARC モノグラフの評価間で30扱われたメカニズムのトピックスの範囲における統一性の欠如を生じています。31これらの課題に対処するため、ヒトに対する発がん因子の重要な特徴が、IARC モノグラフ32の評価におけるメカニズムの証拠の系統的な検討を促進するために導入されました(Smith et33al., 2016; Guyton et al., 2018)。「遺伝毒性がある」、「免疫抑制性がある」
、あるいは「受容体介在34性の作用を調節する」といった、Smith et al.(2016)によって記述された重要な特徴(表 3 参35照)は、第 100 巻までの IARC モノグラフプログラムによって同定されたヒトに対する発がん36因子に関連する化学的及び生物学的特性の経験的観察に基づいています。重要な特徴及び関連37するエンドポイントのリストは、その適用の経験に基づいて、また、ヒトに対する新たな発が38 IARC モノグラフ 前文22ん因子が同定されるにつれて、進化することがあります。重要な特徴は、がん細胞の特性に関1連する「がんのホールマーク」
(Hanahan & Weinberg, 2000, 2011)とは明確に異なります。重要2な特徴はまた、発がんにおいて発生すると想定される一連の生物学的事象を記述した、仮説上3のメカニズム経路とも明確に異なります。そこで、以下に概観を示した、重要な特徴に基づく4評価のアプローチは、
「特定の経路及び仮説に狭い焦点を当てることを避け、
メカニズムの証拠5に対して広範な、全体的な検討を提供します」
(National Academies of Sciences, Engineering, and6Medicine, 2017)。7
表 3 Smith et al.(2016)によって記述された発がん因子の重要な特徴
発がん因子の 10 の主な特性
1. 求電子性がある、または代謝的に活性化されて求電子剤になることができる
2. 遺伝毒性がある
3. DNA 修復を改変する、または、ゲノム不安定性を生じる
4. エピジェネティックな改変を誘発する
5. 酸化ストレスを誘発する
6. 慢性炎症を誘発する
7. 免疫抑制性がある
8. 受容体介在性の作用を調節する
9. 不死化を生じる
10. 細胞増殖、細胞死、または栄養供給を改変する
発がん因子の重要な特徴に関係するエンドポイントを組み入れた、ばく露されたヒト及びヒ8トの初代細胞または組織における研究が、入手可能な場合は強調されます。評価のための十分9な証拠のある各々の重要な特徴について、研究は、(a) ヒトまたはヒト初代細胞または組織、あ10るいは(b) 実験系に関与しているかどうか、に従って分類されます;更に、エンドポイント(例11えば DNA 損傷)
、期間、種、性別、系統、及び標的臓器、ならびに研究デザインの強みによっ12て(適宜)整理されます。発がん因子の重要な特徴に関連する感受性を調べる研究(例えば、13遺伝的多型についての、または遺伝子操作動物における研究)が強調されることがあり、証拠14の強さについての結論に対して更なる支持を提供することがあります。特定のタイプの腫瘍に15関係する知見が留意されることがあります。16(c) その他の関連する証拠17その他の情報性のある証拠は、それが発がん性の評価に関係し、全体的な評価に影響を及ぼ18す十分な重要性があるとワーキンググループによって判断される場合、記述されることがあり19ます。特定の化学的及び/または生物学的特徴あるいは活性に関する情報といった、定量的構20造活性情報
(例えば、
求電子性、
受容体との分子ドッキング)
も情報性があることがあります。21加えて、発がん因子のメカニズムについての新たに発生した知識または重要な新しい科学的っ22進展を反映して、認識されている発がん因子の重要な特徴に入らない証拠も含まれることがあ23ります。ヒトにおいては働かないメカニズムによって生じる実験動物における甲状腺、腎臓、24膀胱、
またはその他の腫瘍についての、
権威ある出版物
(例えば、
Capen et al., 1999; IARC, 2003)25で提示されているクライテリアに関係する入手可能な証拠も記述されます。26 IARC モノグラフ 前文23(d) 研究の質及び評価に対する重要性1ワーキンググループは、研究の質(例えば、デザイン、手法、及び結果の報告)の正式な検2討に基づき、包含した研究の幾つかに対し、より大きな重みを与えることがあります。3ヒトにおける観察的研究及びその他の研究については、ばく露の特徴付け及びヒトにおける4がんについての研究をレビューしているワーキンググループのメンバーと共同して、研究デザ5インの質、ばく露評価、及びアッセイの正確性と精度が検討されます。また、疫学的証拠の評6価についての上述の要因を含むその他の重要な要因も検討されます(García-Closas et al., 2006,72011; Vermeulen et al., 2018)
(パート B、セクション 1 及び 2)。8
一般的に、実験系においては、反復投与の研究及び慢性ばく露の研究には、単回投与または9単一時点の研究と比較して、より大きな重要性が与えられます。投与範囲の適切性、観察され10た同時毒性の程度、
及び研究の報告の完全性
(例えば、
作用因子の供給源及び純度、
分析手法、11及び結果)といった要因も検討されます。実験モデル間で、またばく露されたヒト集団におい12て、ばく露と標的組織が様々である可能性があることを認識して、実験研究の評価においては13ばく露の経路は一般的に重要性が比較的低い要素であるとみなされます。
哺乳類以外の研究は、14それらがヒトまたは高等生物における証拠を支持するとみなされる場合、集約的に要約される15可能性があります。16In vitro 試験系はメカニズムについての洞察を提供することができますが、重要な検討事項に17は、試験系の限界(例えば、代謝能力における限界)ならびに特定の被験物質の適切性(即ち、18物理的及び化学的特徴による)が含まれます(Hopkins et al., 2004)
。細菌及び哺乳類の細胞にお19ける突然変異についての伝統的な研究といった、幾つかのエンドポイントについての研究に対20しては、経済協力開発機構のガイドラインを含む正式なガイドラインが、質のレビューを実施21する上で有益であることがあります(OECD, 1997, 2016a, b)
。但し、既存のガイドラインは関22係する全てのアッセイをカバーするわけではなく、遺伝毒性さえもカバーしません。In vitro 研23究の質を評価する際の対象となり得る検討事項には、手法及びデザイン(例えば、エンドポイ24ント及び試験手法、反復試験試料の数、濃度範囲の適切性、陽性及び陰性対照の包含、ならび25に細胞毒性の評価)
、ならびに報告(例えば、作用因子の供給源及び純度についての、ならびに26分析手法及び結果についての)が含まれます。高含量、高スループットの in vitro データは、メ27カニズムの証拠の追加的または支持的な情報源となることができます(Chiu et al., 2018; Guyton28et al., 2018)が、様々なエンドポイントを測定する大規模なスクリーニングプログラムは、特定29の化学物質または化学物質群のハザードの同定のためというよりも、更なる毒性試験のための30化学物質の優先順位付けのための、大規模化学物質ライブラリーを評価するようにデザインさ31れています。32証拠の集約では、全体的評価に対して最も情報性のある証拠に焦点が当てられます。この点33において、
ヒトに対する幾つかの発がん因子が単一の、
または主たる重要な特徴を示す証拠は、34それらのがんハザード分類において影響力を及ぼしているということに留意すべきです。例え35ば、酸化エチレンには遺伝毒性があり(IARC, 1994)
、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾパラジオキ36シンは受容体介在性の作用を調節し
(IARC, 1997)、エトポシドは DNA 修復を改変します
(IARC,372012a)
。同様に、発がんウイルスは不死化を生じ、ある種の薬剤にはその設計上、免疫抑制性38があります(IARC, 2012a, b)
。非発がん因子も酸化ストレスを誘発することができるため、こ39 IARC モノグラフ 前文24の重要な特徴は、それが他の重要な特徴と組み合わされて見出されるのでない限り、注意して1解釈することが望まれます(Guyton et al., 2018)
。重要な特徴のグループについての証拠は、メ2カニズムについての結論を強化することができます(例えば、
「酸化ストレスを誘発する」と、3「求電子性がある、または代謝的に活性化されて求電子剤になることができる」、「慢性炎症を4誘発する」、及び
「免疫抑制性がある」
との組み合わせ);例えば、
1-ブロモプロパン
(IARC, 2018)5の場合を参照してください。65. 報告されたデータの要約7(a) ばく露の特徴付け8ばく露データは、作用因子を同定し、その生産、使用、及び発生を記述するために要約され9ます。地理的パターン及び時間的傾向を含む、様々なセッティングにおけるばく露の存在率及10び強度についての情報が含まれることもあります。ワーキンググループによってレビューされ11た重要な疫学研究において用いられたばく露評価の手法が記述され、評価されます。12(b) ヒトにおけるがん13ヒトにおける発がん性の評価に関連する疫学研究の結果が要約されます。どのようにしてそ14の評価に到達したかを示すため、疫学的証拠の全体的な強みと限界が強調されます。作用因子15とがんとの間の正の関連が観察された標的臓器または組織が同定されます。入手可能な場合、16ばく露–反応及びその他の定量的データが要約されることがあります。入手可能な疫学研究が17複雑なばく露、プロセス、職業、または産業に関係している場合は、ワーキンググループは、18何らかの過剰リスクの原因である可能性が最も高いとみなされる特定の作用因子を同定するこ19とに努めます。評価は、入手可能なデータが許す限り範囲を狭めて焦点が当てられます。20(c) 実験動物におけるがん21どのようにしてその評価に到達したかを示すため、実験動物における発がん性の評価に関係22する結果が要約されます。
各々の動物種、
研究デザイン、
及び投与経路について、
発生の増加、23潜伏期間の短縮、あるいは新生物または前新生物病変の重症度または多重性の増大が観察され24たかどうかが記述され、腫瘍部位が示されます。出生前ばく露または単回投与実験といった、25腫瘍に至る特別な条件も言及されます。陰性の知見、逆相関、用量-反応パターン、及びその26他の定量的データも要約されます。27(d) メカニズムの証拠28どのようにしてその評価に到達したかを示すため、発がん性についてのメカニズムの証拠に29関係する結果が要約されます。
この要約は、
についての情報性のある研究を包含します:吸収、30分布、代謝、及び排泄;評価のための十分な証拠のある重要な特徴;ならびに、全体的な評価31に影響を及ぼすのに十分な重要性のあるその他の側面、これには、作用因子が、その中の一つ32またはそれ以上がヒトに対して発がん性がある、またはおそらく発がん性があると分類されて33いる作用因子のクラスに属するかどうか、ならびに、ヒトにおいては働かないメカニズムによ34って誘発された実験動物における腫瘍に関するクライテリアを含みます。扱われる各々のトピ35 IARC モノグラフ 前文25ックについて、ばく露されたヒト、ヒトの細胞または組織、実験動物、あるいは in vitro 系から1得られた主な支持的知見が強調されます。ばく露されたヒトにおけるメカニズム研究が入手可2能な場合、研究された腫瘍のタイプまたは標的組織が明記されることがあります。証拠の欠如3が示されます(即ち、ばく露されたヒト、in vivo システムにおける研究が入手できない場合)。4
異なる実験系の間での影響の一貫性または差異が強調されます。56. 評価及び論拠6ヒトにおけるがんについての証拠、実験動物におけるがんについての証拠、及びメカニズム7の証拠の強さについての合意された評価が、透明性のあるクライテリア及び定義された記述的8用語を用いて作成されます。ワーキンググループは次に、レビュー対象の各々の作用因子につ9いての発がん性の証拠の強さの合意された全体的評価を作成します。10証拠の強さの評価は、レビュー対象の作用因子に限定されます。評価されている複数の作用11因子が十分密接に関連しているとワーキンググループにみなされた場合、証拠の強さの単一で12統一された評価を目的として、それらの作用因子が一緒にまとめられることがあります。13以下に述べるこれらの評価のための枠組みは、発がん性についての特定の評価に関係する全14ての要因を必ずしも包含していないかもしれません。
関係する全ての科学的知見を検討した後、15ワーキンググループは、全体的評価のための明確な論拠を提供する一方、例外的に、その枠組16みの厳密な適用が示すはずのものとは異なるカテゴリーに作用因子を割り当てることがありま17す。18ワーキンググループのメンバー間に科学的解釈に大きな相違がある場合、全体的評価はワー19キンググループのコンセンサスに基づくことになります。代替的な解釈の要約が、その科学的20論拠と、各々の代替的な解釈に対する支持の相対的な程度の指標とともに示されることがあり21ます。22分類のカテゴリーは、あるばく露に発がん性があるという証拠の強さを指すのであって、特23定のばく露によるがんのリスクを指すのではありません。おそらく発がん性がある(probably24carcinogenic)
、及び 発がん性があるかもしれない(possibly carcinogenic)という用語には定量25的な重要性はなく、ヒトにおける発がん性の証拠についての異なる強さの記述子として用いら26れます;おそらく発がん性がある は、発がん性があるかもしれない よりも証拠の強さが大き27いということを意味します。28(a) ヒトにおける発がん性29パート B のセクション 2 に概説された原則に基づき、ヒトにおける研究からの発がん性に関30係する証拠は以下のカテゴリーの一つに分類されます:31発がん性の十分な証拠(Sufficient evidence of carcinogenicity)
:作用因子へのばく露とヒトの32がんとの間に因果関係が確立されています。つまり、偶然、バイアス、及び交絡が合理33的な信頼性をもって排除された研究において、
作用因子へのばく露とがんに関する証拠34全体に正の関連が観察されています。35発がん性の限定的な証拠(Limited evidence of carcinogenicity)
:作用因子へのばく露とがんに36ついての証拠全体に観察された正の関連の因果的解釈は信頼できるものの、偶然、バイ37 IARC モノグラフ 前文26アス、または交絡が合理的な信頼性をもって排除できませんでした。1発がん性に関する不十分な証拠(Inadequate evidence regarding carcinogenicity)
:入手可能な2研究は、質、一貫性、または統計的制度が不十分で、ばく露とがんとの間の因果関係の3有無について結論を導けない、または、ヒトにおけるがんについてのデータが入手でき4ません。
発がん性についての不十分な証拠という決定につながる共通する知見には次の5ものがあります:(a) ヒトにおけるデータが入手できない;(b) ヒトにおける入手可能な6データはあるものの、それらは質または情報性が劣っている;(c) ヒトにおける十分な7質の研究は入手可能だが、それらの結果には一貫性がない、または決定的でない。8発がん性がないことを示唆する証拠(Evidence suggesting lack of carcinogenicity)
:ヒトが遭遇9することが知られているばく露のレベルの全範囲をカバーした質の高い研究が複数あ10り、それらの研究は、観察されたいずれのばく露レベルでも、作用因子へのばく露と研11究対象のがんとの間に正の関連を示さないことで相互に一貫性があります。
これらの研12究からの結果は単独で、または組み合わせた場合、上限値がヌル値未満またはそれに近13い、狭い信頼区間を有していることが望まれます(例えば、相対リスクが 1)
。バイアス14及び交絡が合理的な信頼性をもって排除され、研究は情報性があるとみなされます。発15がん性がないことを示唆する証拠 という結論は、入手可能な研究でカバーされる、が16んの部位、集団及びライフステージ、ばく露の条件及びレベル、ならびに観察期間の長17さに限定されます。加えて、研究されたばく露レベルでの非常に小さなリスクの可能性18を決して排除することはできません。19十分な証拠 がある場合、別の文章で、因果的解釈が確立されている標的臓器または20組織を特定します。限定的な証拠 がある場合、別の文章で、その作用因子へのばく露21とがんとの間の正の関連がヒトにおいて観察された標的臓器または組織を特定します。22発がん性がないことを示唆する証拠 がある場合は、別の文章で、発がん性がないこと23の証拠がヒトにおいて観察された標的臓器または組織を特定します。
特定の標的臓器ま24たは組織を、
十分な証拠 または 限定的な証拠 または 発がん性がないことを示唆する25証拠 があるとして特定することは、その作用因子がその他の部位でがんを生じるかも26しれないという可能性を排除するものではありません。27(b) 実験動物における発がん性28実験動物における研究からの発がん性に関係する証拠は以下のカテゴリーの一つに分類され29ます:30発がん性の十分な証拠 :(a) 二つまたはそれ以上の動物種において、あるいは(b) 異なる時31期に、または異なる研究機関で、及び/または異なるプロトコルの下で実施された、一32種類の動物種での二つまたはそれ以上の独立した研究において、悪性新生物、または良33性及び悪性の新生物の適切な組み合わせの発生の増加に基づき、
実験動物におけるその34作用因子へのばく露とがんとの間に因果関係が確立されています。
良好に実施された研35究、理想的には優良試験所基準(GLP:Good Laboratory Practices)の下で実施された研36究における単一の動物種の雌雄での悪性新生物、
または良性及び悪性の新生物の適切な37 IARC モノグラフ 前文27組み合わせの発生の増加も、十分な証拠 を提供することができます。1例外的に、悪性新生物が、発生、部位、腫瘍のタイプ、または発生時年齢に関して通常と異2なる程度で発生する場合、あるいは、複数の部位で腫瘍の顕著な知見がある場合、一つ3の動物種及び一方の性における単一の研究が 発がん性の十分な証拠 を提供するとみ4なされることがあります。5発がん性の限定的な証拠 :データは発がん作用を示唆しているものの、例えば次のような6理由で、決定的な評価を行うためには限定的です:(a) 発がん性の証拠は単一の実験に7限られ、
十分な証拠 のクライテリアを満たさない、
(b) 作用因子は良性新生物または新8生物の潜在的可能性が不確かな病変の発生のみを増加させる;(c) 作用因子は腫瘍の多9重性を増加させる、
または腫瘍の潜伏期間を短縮させるが、
腫瘍の発生は増加させない;10(d) 発がん性の証拠はイニシエーション-プロモーション研究に限られる;(e) 発がん11性の証拠は非実験動物(例えば、伴侶動物)における観察研究に限られる;あるいは(f)12入手可能な研究のデザイン、実施または解釈の妥当性について未解決の問題がある。13発がん性に関する不十分な証拠 :大きな定性的または定量的な限界がある、あるいは実験14動物におけるがんついて入手可能なデータがないため、
研究は発がん作用の有無を示し15ていると解釈することができません。16発がん性がないことを示唆する証拠 :少なくとも二つの動物種の両性が関与する、良好に17実施された研究(例えば、GLP の下で実施された)が入手可能であり、用いられた試験18の限界の範囲内で、作用因子に発がん性がないことを示しています。発がん性がないこ19とを示唆する証拠 という結論は、入手可能な研究によってカバーされた動物種、腫瘍20部位、ばく露時年齢、ならびにばく露の条件及びレベルに限定されます。21(c) メカニズムの証拠22パート B のセクション 4 に概説された原則に基づき、メカニズムの証拠は以下のカテゴリー23の一つに分類されます:24強いメカニズムの証拠 :複数の異なる実験系における結果には一貫性があり、全体的なメ25カニズムのデータベースにも整合性があります。
重要なメカニズムのプロセスの抑制が26腫瘍成長の抑制につながるということを実験的に証明する研究によって、
更なる支持を27得ることができます。一般的に、一つまたはそれ以上の哺乳類の種において、ある範囲28の関係するエンドポイントについての相当数の研究が入手可能です。
定量的な構造-活29性の検討、ヒト以外の哺乳類の細胞における in vitro 試験、及び哺乳類以外の種におけ30る実験は、裏付けとなる証拠を提供することがありますが、一般的に、それ自体が強い31証拠を提供することはありません。但し、異なる種における幾つかの異なる試験系を通32じて一貫性のある知見は、強い証拠を提供することがあります。33注意すべきは、
「強い」
は証拠の効力にではなく、
証拠の強さに関連しているということです。34この分類は次の三つの明確に分かれたトピックスに適用されます:35(a) メカニズムの検討に基づき、
作用因子が、
その中の一つまたはそれ以上がヒトに対して36 IARC モノグラフ 前文28発がん性がある、またはおそらく発がん性があると分類されている作用因子のクラスに属1するという強い証拠。この検討は、定量的な構造-活性関係を超えて、異種化学物質間で2共通の重要な特徴に関係する生物学的活性における類似性(例えば、分子ドッキング、‐オ3ミクスデータに基づくもの)を組み込むことができます。4(b) 作用因子が発がん因子の重要な特徴を示すという強い証拠。この場合、次の三つの記5述子があり得ます:6(1) 強い証拠がばく露されたヒトに存在します。
特定の腫瘍タイプに関係する知見が、7この決定において情報性があることがあります。8(2) 強い証拠がヒトの初代細胞または組織に存在します。特に、強い知見がヒトから9得た生物試料(例えば、ex vivo ばく露)から、ヒトの初代細胞から、及び/また10は、場合によっては、その他のヒト化系(例えば、ヒト受容体または酵素)から11のものです。12(3) 強い証拠が実験系に存在します。これには、ヒトの初代細胞及び組織における一13つまたは少数の研究が含まれることがあります。14(c) 実験動物における発がん性のメカニズムがヒトにおいては働かないという強い証拠。15実験動物における特定の結果(パート B、セクション 6b 参照)は、権威ある出版物におけ16る関係するクライテリア及び検討事項(例えば、Capen et al., 1999; IARC, 2003)に従い、17無視されるでしょう。一般的に、この分類は、作用因子が発がん因子の重要な特徴を示す18という強いメカニズムの証拠がある場合には適用されません。19限定的なメカニズムの証拠 :証拠は示唆的であるものの、例えば、(a) 研究がカバーしてい20る実験、関係するエンドポイント、及び/または種の範囲が狭い;(b) 同様のデザイン21の研究において説明できない不一致がある;及び/または、(c) 異なるエンドポイント22間で、または異なる実験系において、説明できない不整合がある。23不十分なメカニズムの証拠 :不十分なメカニズムの証拠の決定につながる一般的な知見に24は次のようなものがあります:(a) 入手可能なデータがほとんどない、
または全くない;25(b) 研究のデザイン、実施、または解釈の妥当性について未解決の問題がある;(c) 入手26可能な結果が陰性である。27(d) 全体的評価28最後に、ヒトに対する作用因子の発がん性についての全体的評価に到達するため、各々の証29拠の流れに含まれる証拠が全体として検討されます。証拠の三つの流れが集約され、作用因子30は次のカテゴリーの中の一つに分類され
(表 4 参照)、ワーキンググループが以下を確立したこ31とが示されます:32作用因子にはヒトに対して発がん性がある(carcinogenic to humans) (グループ 1)33このカテゴリーは、ヒトにおいて 発がん性の十分な証拠 がある場合に常に適用されます。34 IARC モノグラフ 前文29加えて、このカテゴリーは、作用因子が発がん因子の重要な特徴を示す、ばく露されたヒト1における強い証拠 と、実験動物における 発がん性の十分な証拠 の両方がある場合にも適用2されることがあります。3作用因子にはヒトに対しておそらく発がん性がある(probably carcinogenic to humans) (グループ 2A)4このカテゴリーは一般的に、
ワーキンググループが少なくとも 次のうち二つの 評価を下し、5そのうちの少なくとも一つ がばく露されたヒトまたはヒトの細胞または組織のいずれかが関6わる場合に適用されます:7・ ヒトにおける 発がん性の限定的な証拠、8・ 実験動物における 発がん性の十分な証拠、9・ 作用因子が発がん因子の重要な特徴を示すという強い証拠。10ヒトにおける 発がん性に関する不十分な証拠 がある場合、作用因子が発がん因子の重要な11特徴を示す、
ヒトの細胞または組織における強い証拠 があるはずです。
ヒトにおける発がん性12の限定的な証拠 がある場合、二つ目の個別評価は実験系からのもの(即ち、実験動物における13発がん性の十分な証拠、または 作用因子が発がん因子の重要な特徴を示すという実験系にお14ける強い証拠)であることもあります。15一つまたはそれ以上の腫瘍部位について 実験動物における発がんのメカニズムがヒトにお16いては働かないという強い証拠 がある場合、追加的な検討が適用されます。具体的には、グル17ープ 2A における全体的な分類を支持するためにこの評価を用いるには、残りの腫瘍部位が依18然として 実験動物における十分な証拠 という評価を支持することが望まれます。19これとは別に、このカテゴリーは一般的に、作用因子が、メカニズムの検討に基づき、その20中の一つまたはそれ以上がグループ 1 またはグループ 2A に分類されている作用因子のクラス21に属するという強い証拠 がある場合に適用されます。22作用因子にはヒトに対して発がん性があるかもしれない(possibly carcinogenic to humans) (グルー23プ 2B)24このカテゴリーは一般的に、以下の評価のうちの一つのみがワーキンググループによって下25された場合に適用されます。26・ ヒトにおける 発がん性の限定的な証拠、27・ 実験動物における 発がん性の十分な証拠、28・ 作用因子が発がん因子の重要な特徴を示すという強い証拠。29このカテゴリーは実験動物における研究のみからの証拠に基づいている可能性があるため、30ばく露されたヒトまたはヒトの細胞または組織における強いメカニズムの証拠があるという要31件はありません。このカテゴリーは、作用因子が発がん因子の重要な特徴を示すという実験系32における強い証拠 に基づいていることがあります。33グループ 2A の場合と同様に、一つまたはそれ以上の腫瘍部位について 実験動物における発34がんのメカニズムがヒトにおいては働かないという強い証拠 がある場合、追加的な検討が適35用されます。具体的には、グループ 2B における全体的な分類を支持するためにこの評価を用36いるには、残りの腫瘍部位が依然として 実験動物における十分な証拠 という評価を支持する37ことが望まれます。38 IARC モノグラフ 前文30作用因子のヒトに対する発がん性を分類できない(not classifiable as to its carcinogenicity to human)1(グループ 3)2他のどのグループにも当てはまらない作用因子は一般的にこのカテゴリーに入れられます。3これには、実験動物における一つまたはそれ以上の腫瘍部位について、実験動物における発4がんのメカニズムがヒトにおいては働かないという強い証拠 があり、残りの腫瘍部位が 実験5動物における十分な証拠 という評価を支持せず、
また、
その他のカテゴリーがヒトにおける研6究及びメカニズム研究からのデータによって支持されない場合が含まれます。7グループ 3 の評価は、発がん性がない、または全体的な安全性の決定ではありません。これ8はしばしば、作用因子の発がん性の潜在的可能性が未知である、また、研究における有意な欠9落がある、ということを意味します。10作用因子が、
ヒト及び実験動物の両方において 発がん性がないことを示唆する証拠、
または、11ヒトのがんに関係するアッセイにおける強い陰性のメカニズムの証拠によって補足される、実12験動物における 発がん性がないことを示唆する証拠 のいずれかを通じて、作用因子が発がん13活性を示さないということを証拠が示唆する場合、ワーキンググループは、十分研究され、発14がん活性の証拠がないとして作用因子を特徴付けるため、評価に一文を付け加えることがあり15ます。16(e) 論拠17ワーキンググループがその評価に達するために用いた論法が要約され、それによって評価の18根拠の透明性が示されます。このセクションは、ヒトにおけるがん、実験動物におけるがん、19及びメカニズムの証拠についての研究からの主な知見を統合します。これには、ワーキンググ20ループの討議において現れた主な議論についての簡潔な声明、各々の証拠の流れについての証21拠の強さに関するワーキンググループの結論、これらの結論に対して極めて重要な証拠全体の22提示、及び、評価を行う上でのワーキンググループの論法の説明が含まれます。23 IARC モノグラフ 前文31表 4 全体的な分類に到達する上での証拠の流れの統合(斜体 で示した証拠は全体的な評価の
根拠を意味する)
証拠の流れ 証拠の重みに基づく
分類
ヒトにおけるがんの証
拠 a
実験動物における
がんの証拠
メカニズムの証拠
十分 不要 不要 ヒトに対して発がん性
がある(グループ 1)
限定的または不十分 十分 強い(b)(1)
(ばく露されたヒト)
限定的 十分 強い(b)(2-3)、
限定的、
または不
十分
ヒトに対しておそらく発
がん性がある(グルー
プ 2A)
不十分 十分 強い(b)(2)(ヒトの細胞または
組織)
限定的 十分に満たない 強い(b)(1-3)
限定的または不十分 不要 強い(a)(メカニズム的分類)
限定的 十分に満たない 限定的または不十分 ヒトに対して発がん性
が あ る か も し れ な い
(グループ 2B)
不十分 十分 強い(b)(3)、限定的、または不
十分
不十分 十分に満たない 強い(b)(1-3)
限定的 十分 強い(c)(ヒトでは働かない)b
不十分 十分 強い(c)(ヒトでは働かない)b
ヒトに対する発がん性
を分類できない(グル
ープ 3)
上記以外の全ての状況
a 評価が最も高いヒトのがん
b 実験動物における発がんのメカニズムがヒトにおいては働かないという強い証拠 は、具体的には実験動
物における強い証拠 の分類を支持する腫瘍部位についてのものでなければならない。1 IARC モノグラフ 前文32参考文献1Alexandrov LB, Ju YS, Haase K, Van Loo P, Martincorena I, Nik-Zainal S, et al. (2016). Mutational2signatures associated with tobacco smoking in human cancer. Science. 354(6312):618–22.3https://doi.org/10.1126/science.aag0299 PMID:278112754Axelson O, Steenland K (1988). Indirect methods of assessing the effects of tobacco use in occupational5studies. Am J Ind Med. 13(1):105–18. https://doi.org/10.1002/ajim.4700130107 PMID:33447506Baan RA, Stewart BW, Straif K, editors (2019). Tumour site concordance and mechanisms of carcinogenesis7(IARC Scientific Publication No. 165). Lyon, France: International Agency 9 for Research on Cancer.8Available from: http://publications.iarc.fr/578.9Bieler GS, Williams RL (1993). Ratio estimates, the delta method, and quantal response tests for increased10carcinogenicity. 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